もう、タムカスとは言わせない。 SP 45/1.8 Di VC USD を今更レビューする。
「ブランド力」って大事ですよね。
「Leica」と書いているだけで、あるいは「Hasselblad」と記されているだけで、只のレリーズボタンや、一見普通なレンズに数万、数十万の値が付くのはざらです。
そして、同じブランド内でも特別な「ブランド力」を持つ製品たちはあります。
Canonでの白レンズ
NikonZでのSライン
ZeissでのOtus
これ以上言うと第三次世界大戦始まりかねんので、ここら辺にしておきます。
値段も性能も、ちょっと別格って感じがして憧れるよね。高級ラインって。
そして、あのタムロン君にも生意気なことに高級ラインがあります。
それが…「SP」!
「1979年に『最高の1枚を撮るためのレンズを、写真を愛する人へ届けること』をコンセプトに生まれたタムロンのSP (Superior Performance) レンズシリーズ」
(タムロン公式HPより)
↑一応公式から引っ張ってきたんだけど、superior とsuperが混在してるんだよね。多分Superが主流派っぽい。上のは誤字かな?
まあどちらにせよ、「SP」=「スーパーなパフォーマンス」ってことだね!(英弱)
そこで少し昔のタムロンに詳しい人は、「ん?」ってなるかもしれません。
そう、昔のSPは くそ雑魚多い! そこまでスーパーなパフォーマンス見せてくれない率が高かったのです。
(昔の白レンも微妙なのあるが)
やむを得ないかもしれません。「サードパーティ=安くてまあまあな品質」という図式があったのは否めないでしょうし。
それにしても、デジタル黎明期を中心としたタムロンの高倍率ズームはヤバいよ。一回使ってみ、飛ぶぞ。(画質的な意味で)
しかしながら、「サードパーティ=安くて~」の図式も、少しずつ崩れていきます。(筆頭はSIGMAかな?)
タムロン君もそろそろ高級路線で売り出したくなってきました。乗るしかないよね。このビックウェーブに。
ということで~
TAMRONは新生SPシリーズを発表。
「来る高画素時代~」を命題とし、TAMRONとしての高級ラインとしてのSPをリビルドしました。
その切り込みとして選ばれたのは35,45の二本。
自社の新時代を象徴するこのレンズたちは、TAMRONの技術を惜しみ無く投入されたとパンフレットの裏表紙一面にデッカく書かれます。
そのコストとして、サードパーティの標準単焦点としてはかなり高額な9万となります。
同スペック帯の Nikon純正 35/1.8 や 50/1.8 よりも全然高い値段設定に、タムロン君の自信と明確な方向転換の意思を感じられますね。
さて、前置きが長くなってしまいました。
それではこの、タムロン君渾身の一本、SP 45/1.8 Di VC USD は果たしてどんなレンズなのか。紹介していきたいと思いまぁす!
基本性能
上記の通り、焦点距離は45mm。往年のパンケーキレンズを彷彿とさせる焦点距離。
しかしながら重量520gと、パンケーキはパンケーキでも原宿系の三段パンケーキクラスの重量です。
全く関係ないんですが、江の島に有名なおしゃれ系パンケーキ屋があるんです。そこから発せられる「陽」のオーラが強すぎて、江の島上陸15分で退散したことがあります。パンケーキに千円強払うカップルが理解できず、そしてそれを理解できない自分が嫌になりました。
さて、そんな俺よりは明るめな開放1.8のこのレンズですが、昨今の標準単と比べると、より明るく、より小さいレンズはざらにあります。
バカ明るいわけでもない標準単がここまで重くなった理由、それはズバリ…
手振れ補正!
レンズシフト式の手振れ補正の歴史はかなり長く、一眼レフカメラ用レンズでは1995年に発売されたキヤノンのEF75-300mm F4-5.6 IS USMが最初になります。
最早望遠レンズに搭載されていることは当然となりましたが、実は標準単には長らく搭載されていなかったのです。
理由としては「標準域ではブレはさほど目立たない」「重くしてまで内蔵するメリットが少ない」と言ったところでしょうか。
少なくともこのレンズが発売された2015年までは手振れ補正内蔵の標準単は無く、タムロン調べを信じるならば20年の空白があったことになります。
(フルサイズ対応の大口径標準単焦点レンズとしては初の手ブレ補正機構を搭載 タムロン公式より)
手振れ補正には定評のあるタムロン君。この手振れ補正機構(VC)もかなり有能です。
頑張れば一秒は行けます。いくら高感度対応時代になったとはいえ、手振れ補正はあると何かと便利ですよね。
さらにもう一つ嬉しい機能としては、最短撮影距離が29センチとかなり短いです。
新生SPの紹介文にも「驚異的な最短撮影距離を実現」と書かれていますね。
最短撮影距離は短いに越したことないです。Ai-sも見習ってほしいなぁ(Ai-s50/1.4は最短45㎝)
タムロン名物逆光耐性つよつよコーティングも健在です。いざフレアがでると中々気持ち悪い形ですが、相当意地悪な場面でないとフレア、ゴーストは出ないと思っていいでしょう。
外観としては、金属鏡筒に大きめのフォーカスリング。操作感も外観も高級感があります。流石、新生SPですね。
上記の通り、希望小売価格は9万。
そして気になる実売価格は~~~~
2020時点で約3万円。
何があった????
希望小売価格、9万からマイナス6万…?
次章では作例を交えつつ、何故実売が希望小売価格の1/3になってしまったのかを見ていきましょう。
作例と実用所感
重いとは言ったものの、D750クラスのボディに付けたならば取り回しは良。
癖の少ない優等生的な写りをしてくれます。
シャドー部はよく粘り、ハイライトの飛びも違和感は感じられません。
逆光性能もこの通り。
レンズの弱点をカバーする手間から解放されます。
後ろのボケ味はこんな感じ。
個人的には好みです。
玉ボケも綺麗。
一つ大きな弱点を言うなれば、AFの遅さですね。
二枚目のように、大きく動く被写体は厳しいところがありますが、普段使いにはなんら問題はありません。
近年の傾向からすると1.8はそこまで大口径とは言えないかもしれませんが。
やはり明るいですね。しかも、開放での描写も十分です。流石新生SP。
さて、こんなぐっとレンズが安価になってしまった理由。(これは結局周囲の反応から憶測したところも大きいですが…)
一つ目は、パープルフリンジがかなり出てしまうこと。
作例ではあまり目立たないかもしれませんが、確かに前ボケハイライト部などには顕著にみられるかなと感じる場面もありました。
確かに、気にする人はいそうですね…。私はさほど億劫には感じませんでしたが、個人差と言うことで。
二つ目は、AFに関する評価。
確かにそこまで早くはありませんが、普通のストリートスナップくらいだったら常用レベルだと思います。
しかしながら、いくつかのレビューで「遅すぎる!」という意見が散見され、「このレンズはAFが遅いと聞き、別のやつにしました~」という声も聞こえる始末。
ちょっとかわいそうですね。
三つ目は、単純に発売から年数がたっているということ。
しかしながら、D750と同い年くらいなのでそこまで古いというわけではありませんが。
最新ともいえない年数(5,6年)経っていますので、ある程度値段が下がるのも頷けます。
それにしても、3万で買えていいレンズではないんじゃないかな~と思うのが所感ですね。
さて、こんなところで今回のレビューを終わりましょうか。
世の中に名機、銘玉は多くども、果たして何割が正当な評価を得ているのでしょうか。
インターネットに多くのレビューが満ち溢れる昨今。主観抜きのレビューなど、ないと考えて良いでしょう。
もちろん、このレビューも類に漏れません。
実際に手に取り、撮ってみる。その行為はどんなレビューにも勝るというのが自論です。
最後にちょっとカッコつけたような、自分のレビューの存在意義を脅かすようなことを言いましたが…。
これも、あくまで一人のレビューとして、参考になればいいかなと思います。